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第二次改正少年法の成立に思う
2007.05.26
子どもと法・21 会員

 5月24日は傍聴が無理だったことで、インターネット相手に忍耐を強いられる一日となった。5時過ぎても質問が続いているので今日は採決まで行かないのではないかと予想したが、どうしてどうして付帯決議まで出来上がっていて、与党修正案通りの採決となった。法案が通る時ってこんなものなのかなと空しさが襲う。今更と笑われてもしようがないが、国会での論戦には審判や応援団の票はないんだということを改めて思い知った。

 野党側質問はいずれも論理的で熱を帯び、鋭い切り込みの連続であったのに比べて提案側の答弁は、抽象的、論点ずらしが目立ち、官僚たちの答弁の無味乾燥ぶりもひどかった。
 数の論理の前では、どんなに拙速で短絡的な動機から作られた法案であっても、まかり通ってしまうことの恐さを感じた。

 今回の審議を通じて、結局改正案は03年、04年に起きた12才及び、11才の触法少年の起こした重大事件をきっかけにわき上がったヒステリックな世論に便乗して一挙に厳罰化を進めようとしたものであること、しかも対象が年少者であることで児童福祉軽視の姿勢が色濃くにじみ出るものとなったことは明白である。何よりも少年不在、市民不在の改悪であったといえる。

 ただ思わぬ副産物もあった。
 衆議院では国立きぬ川学院、参議院では武蔵野学院の見学が実施されたこともあるが、法務委員会でやたら「育て直し」(育ち直し)の言葉が、会場を飛び交い、夫婦小舎制が人気を博したことである。法務大臣までが「少年院は罰する施設ではない。育て直しをする施設である」と連発するのには参った。
 与党の議員の中には武蔵野学院の見学で感激し児童自立支援施設の充実を提案する人もいた。
 どうせならもう少し早い時期に児童自立支援施設を見学したり、夫婦小舎制が何を目指し、そこで実践される育ち直しとは何なのかをよく理解してから審議に臨んでほしかったと思う。

 今度の改正には厳罰化に加えてもう一つの意図が感じられる。少年院に児童福祉領域の理念、手法を取り込み、法務省の守備範囲の拡大を計りたいのでないかという点である。審議では盛んに年齢引き下げは、処遇の選択肢の幅を広げる効果があり、14才以上の児童自立支援施設送致、14才未満の少年院送致が必要に応じて可能になるではないかと執拗に繰り返している。

 冗談を言ってはいけない。最初から家裁で受理した14才以上の少年について施設収容の必要のある少年を、少年院ではなく、児童自立支援施設に送致する試みは、60年近くやってきている。児童自立支援施設の処遇方針もあって中学卒業までに一年以上の処遇期間を残すことが条件とされる所が多いため、必然的に14才に集中することが多かったとは思うが。
 子どもたちの精神年齢、特に社会性の成熟度はどんどん下がってきているので、16,17才以上でも児童自立支援施設段階からやり直しさせたい子はいっぱいいても、14才未満でその成育度からみて、矯正教育が相当と思われる子は多分皆無であろうと思う。 法務省はそこで躍起になって少年院処遇の中に疑似家族と称して年少少年のための特別処遇プログラムを作ろうとしているが、ここでの最大の誤算は、疑似家族(夫婦小舎制)が機能するのは開放処遇が絶対条件であることを忘れていることである。右手にムチ(拘禁)左手にアメ(疑似家族)の政策は最初から破綻しているといえるのである。

 最後にもう一つ、少年保護優先、児童福祉優先の理念の中には、少年非行の処遇を、行為の結果の軽重のみで分類する考え方はないのである。その意味でも第一次改正に続き、第二次改正もまた少年保護、児童福祉の理念を大きく揺るがすものであることを銘記したい。

− 子どもの育ちと法制度を考える21世紀市民の会 (子どもと法21) − 関連サイト 事務局通信
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