少年法「改正」から一年経ちます
2001年11月15日

私たちは「子どもと法・21」(前身「検察官関与に反対し少年法を考える市民の会」)という名の市民運動体です。少年法や教育基本法をはじめとする、子どもの暮らしに関係のある法律について話し合ったり研究したりしています。そして、それらの法律が、より子どもたちを尊重し理解した法律に変わっていくように、また子どもたちを苦める法律に変わらないように行動をしています。
少年法「改正」一周年が近づいてきた今、再び議員の皆様に少年法について考えていただきたく思いご連絡差し上げました。

少年法が「改正」されてしまったのは、昨年の11月28日衆議院本会議においてです。覚えておいででしょうか。少年法は社会や教育の在り方に関する基本的な法律であり、少年のみならず日本の将来に関わる重要な法律です。それなのに、少年非行に関して検討しなければならない多くの問題を棚上げし、「憲法改正を含め、あるいは教育基本法の見直しを含め、新しい21世紀の日本に向かって、社会全体の規範意識、責任や義務、個と全体の関係をきちっとすることが重要」と声高に叫ぶ当時の法務大臣や議員たちの手で「改正」が進められてしまったのは残念でなりません。
「改正」後1年、原則逆送が定着し始めてきており、「改正」以前ならば家庭裁判所で審判し、少年の更生を考えて少年院送致だったような事件も、大人と同じ裁判で裁かれるようになって、刑罰が科せられるようになってしまっています。少年たちが刑罰で責任を自覚したり、反省や謝罪の気持ちを深められるとはとても思えません。かえって社会への恨みを募らせ、将来への希望をますます失ってしまうでしょう。
また、少年審判に検察官も一定条件のもとで参加できることになりました。検察官には、責任を追及し刑罰を求める役割があります。少年にとって審判廷にいる大人が増えるだけでも脅威なのです。それなのに、その大人は尋問のプロである検察官ですし、裁判官も少年の目線に下りて彼らと向かい合うことをやめ、ただ少年を追及の目でしか見なくなってしまいます。これでは大人の裁判の子どもバージョンでしかなく、少年が自分を見つめ直すことなど、とてもできそうにありません。
「改正」の大きな目玉として、「被害者への配慮の充実」をあげていますが、今回の「改正」は本当にそう言えるのでしょうか。速やかな経済的援助や医療的、精神的ケアの確立は全くなされていません。これについて私たちはもっと議論を重ねて実体化していく努力が必要です。

今回の「改正」には、改正少年法施行後 5年経った時に、施行後の状況の報告・検討、法制の整備などを行うようにという附則が盛り込まれています。多数決議会の下、参議院で、「改正」に疑問を持つ議員の方々が勝ち取ったものです。この見直しの時、私たちは慎重に慎重に議論を重ね、少年に何が一番必要なのか、そして将来の日本にとって何が大切なものなのかをよくよく考えて答えを出す必要があるのです。決して今回のような「最初に結論ありき」の議論であってはなりません。
そのために私たちは、今後も少年法や教育基本法をはじめとする、子どもの暮らしに関係のある法律について考えていきます。議員の皆様方も子どもの視点に立って考え続けてください。そして、ぜひとも11月28日に開かれる集会にご参加ください。「改正」後の運用状況を把握していただき、問題意識を改めて持っていただきたく思います。


子どもと法・21(子どもの育ちと法制度を考える21世紀市民の会)
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