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パブリックコメントにご意見をお寄せください。

子どもと法・21では「少年法の対象年齢引下げに関する意見募集」に対して、2015年11月27日、法務省に「意見書」を郵送いたしました。

現在、選挙権年齢引下げに伴い、少年法対象年齢引下げが検討されています。
子どもの成長権という憲法(13条、26条)上の問題もあり、少年のみならず、社会の安全にも大きくかかわる問題となります。少年法は教育基本法と並んで法制定の直後から「改正論」が言われ続けてきました。
2000年の少年法「大改正」では教育基本法「改正」の先兵役を果たしました。当時の法務大臣は「憲法改正、教育基本法の見直しを含め、21世紀に向かって社会全体の規範意識や責任と義務、個と公の関係など、新しい日本のあり方をきちんと求めていくことが極めて重大」と発言をしていました。つまり、少年法「改正」は憲法「改正」とも連動しているのです。

このままでは、世論の動向次第では「賛成」の意見が多く寄せられ、一方の反対意見が少ないまま、充分な審議されることなく、承認されてしまう可能性があります。

是非、下記の反対意見書を参考にしていただいて、数多くのパブリックコメントをお寄せいただけるよう、お願いいたします。

(パブリックコメントサイト)
http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00121.html

  • 提出期限は2015年12月31日
    • 電子メール:jakunen@moj.go.jp または、
    • 郵送:〒100-8977 東京都千代田区霞が関1-1-1法務省内 刑事局刑事法制管理官室
      「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会 意見募集担当」宛
以下、法務省に郵送した「意見書」(PDF)

少年法上の成人になる年齢を20歳から18歳に引き下げるべきかについて ⇒「絶対に反対である。」 その理由は以下である。

1 選挙権年齢と少年法対象年齢は一致しないといけないのか
 選挙権、私法上の成人、「刑事手続において少年として扱われなくなる年齢」はそれぞれ趣旨が異なるので同じにする必要はない。ちなみに、日本の旧少年法は18歳未満が対象(私法上の成人年齢は20歳であった)。国立国会図書館調査及び立法考査局が発表した「主要国の各種法定年齢(選挙権年齢・成人年齢引下げの経緯を中心に)」(PDF)(2008年12月)をみればわかるが、3つが異なる国も少なくない。そもそも各法律における「成人年齢」はその制度のよってきたる趣旨にあわせているもので、統一が当然ということはいえない。  他方、子どもの権利条約が18歳未満であることを理由に少年司法も18歳未満にすべきだという意見もある。だが、子どもの権利条約の趣旨は、最低限18歳未満にすべきという意味である。国連子どもの権利委員会の一般的意見10号「少年司法における子どもの権利」(2007年)では、「自国の少年司法の諸規則の適用を16歳(またはそれ以下の年齢)未満の子どもに限定している締約国、または16歳ないし17歳の子どもが例外的に成人犯罪者として扱われることを認めている締約国に対し、少年司法の諸規則が18歳未満のすべての者を対象として差別なく全面的に実施されるようにする目的で法律を改正するよう勧告する」と言い、最低限18歳にすべきという意味であることを述べている。その上で同じパラグラフで「委員会は、一部の締約国が、一般的規則としてまたは例外としてのいずれであるかに関わらず、少年司法の諸規則を18歳以上の者に対して(通常は21歳まで)適用することを認めていることについて、評価の意とともに留意するものである」(パラ38)と「少年司法に関する年齢の上限」という項で述べている。
 世界的にみれば、子どもの権利条約の関係もあって、少年司法の対象年齢に関していうと、引上げの方向の方が圧倒的である。

2 少年法とはどういう法律か
 少年法は非行をおかした個別子どもの成長を図るものであり、犯罪を予防(こういうことをしたらこういう罰を与える、という警告)するものではない。現行の少年法は、非行をおかしてしまった個別「少年の健全な育成を期す」ことが目的である。日本国憲法の制定と同時に憲法13条や26条を根拠として保護主義を基調(ゆえに福祉教育を柱とする処遇が原則)とした法律である。その思想の根底にあるのは、非行は、子どもの育つ環境(悪環境や幼児期から人格が尊重されないなど)に大きな要因がある、だが子どもは可塑性が高いので、教育福祉的な対応をすればその歪みも減じ成長もしていく、逆に罰はゆがみを加速させ固定化させてしまうおそれが大きい、というものである。そのため、家庭裁判所という新しい裁判所を作り(検察官に左右させないため子どもの事件は全部を家庭裁判所に送る全件送致主義をとったし、検察官は少年審判から完全に外された)、そこに調査官や少年鑑別所など人間科学制度も取り入れた。こうした制度のみならず、特筆すべきは当初からその運用にあって子どもの力・主体性に依拠していたということである(徐々にその実践は少なくなっていくが)。
 子どもの権利条約では40条1項に「 締約国は、刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われ、または認定された子どもが、尊厳および価値についての意識を促進するのにふさわしい方法で取扱われる権利を認める。当該方法は、他の者の人権および基本的自由の尊重を強化するものであり、ならびに、子どもの年齢、および子どもが社会復帰しかつ社会において建設的な役割を果 たすことの促進が望ましいことを考慮するものである」と書いてあるが、日本の少年法が健全な育成はこの趣旨に近い。
 それに少年非行自体減少しているし、「凶悪化している」という現実もない。 さらに言うべきは、凶悪犯罪をおこした子どもほどその生育は悲惨であり、より丁寧な処遇が必要である。後述するが現行少年法の制定にはその趣旨が含まれていた。「凶悪化」は厳罰化する根拠にはなり得ないのであるが、事実としてこのことはきちんと押さえておくべきである。
  まず全体。少年犯罪の検挙人員(警察庁の統計)もそして人口比でも大きく減少している(図1)。しかも図2のようにその大多数は窃盗と横領(放置自転車をもっていく)であり、凶悪犯罪は1966年3.8%→2013年1.38%である。


 「凶悪化」はどうか。図3は殺人(未遂含む)検挙人員である。警察の検挙段階の人員なので、あとで傷害・傷害致死に変わって認定されたり、えん罪であったりする場合もあるが、目安になる。これを見れば一目瞭然。戦後大きく減少(人員も人口比においても)しているのがわかる。内容が凶悪化したのだと言われるが、いつの時代でも似たような事件はあった。


3 現行法が20歳までを対象とした趣旨
 旧少年法(「大正少年法」)の対象は18歳未満であったが、1948年の現行少年法制定に伴って20歳までに引き上げられた。 国会上程時の政府による趣旨説明は以下である(1948年6月19日衆議院司法委員会・佐藤藤佐法務行政長官)。

 最近少年の犯罪が激増し、かつその質がますます悪化しつつあることは、すでに御承知のことと存じます。これは主として戦時中における教育の不十分と、戦後の社会的混乱によるものでありますが、新日本の建設に寄与すべき少年の重要性に鑑み、これを単なる一時的現象として看過することは許されないのでありまして、この際少年に対する刑事政策的見地から、構想を新たにして少年法の全面的改正を企て、もつて少年の健全な育成を期しなければならないのであります。 (略)  第二は年齡引上げの点であります。最近における犯罪の傾向を見ますると、20才ぐらいまでの者に、特に増加と悪質化が顕著でありまして、この程度の年齡の者は、未だ心身の発育が十分でなく、環境その他外部的條件の影響を受けやすいことを示しておるのでありますが、このことは彼等の犯罪が深い悪性に根ざしたものではなく、従ってこれに対して刑罰を科するよりは、むしろ保護処分によってその教化をはかる方が適切である場合の、きわめて多いことを意味しているわけであります。政府はかかる点を考慮して、この際思い切って少年の年齡を20歳に引上げたのでありますが、この改正はきわめて重要にして、かつ適切な措置であると存じます。  (以下略)  

4 少年対象年齢引き下げがもたらすもの
(1)保護措置による再犯防止
 少年によるものも含んだ犯罪は、全体に減少(ただし、65歳以上の高齢者の犯罪は増えている)している。だからこそその中で占める再犯者の割合増加が問題になっている。犯罪の減少は「再犯を防ぐこと」にかかっている。
 少年法の目的は「健全育成」であることは既述したが、その最低目標は再犯防止である。少年非行においても、検挙人員は大きく減少している。だが(だからか)、再犯が占める割合が増えている。少年法は2000年「改正」で大きく変わった。目的条項こそ変わらなかったが、刑事裁判化あるいは厳罰化が顕著に進み内実は大きく変わっている。少年法が意図する丁寧な対応、あるいは少年の力に依拠する待ちの姿勢などが減って、きわめて形式的になっているのが現実である。重い事件は重くというような形式的・手抜き対応のなかで子どもが置き去りにされている。子どもと環境を繋ぐというケースワークこそ、少年法の力であったはずだが、これが消滅方向にある。
 2009年版犯罪白書は「再犯防止施策の充実」を特集している。ここでは、「初犯者・若年者に対する対策の重要性」を訴えている。「再犯を重ねるに従って改善更生の困難さが増大することを意味するとともに,早期の段階での再犯防止に向けた対策の充実の必要性・重要性を示している。」として、「初犯者や若年者は,可塑性に富み,就労の機会も限定的ではないなど,改善更生の余地は大きいと考えられるのであるから,この早期の段階で,必要に応じ,再犯の芽を摘む絶好の機会として,指導・支援を行うことが重要であると考えられる。その機会を逃さないためにも,犯罪・非行の確実な検挙に努めるとともに,事件の動機,背景事情等を可能な限り解明し,その者の行動傾向や態度,再犯の可能性も的確に把握した上で,適正な処遇を行うことが必要である。」という。
 少年法の対象年齢が引き下げられたらどうなるのか。 18、19歳少年に対する家裁の処分(2014年 一般保護事件のみ)は下記表1のとおりである。 これでわかるように、圧倒的多くは保護的措置が取られている。



 日本の子どもたちの非行のピークは14~16歳であるが、下図4(2014年版犯罪白書より)のように、いつの時代でも17歳になると犯罪をする子どもが急激に減少する。逆にいえば、17歳以降も犯罪をおかしているのは、問題性が深い少年といえる。実際、2014年の処分結果をみると、年少少年の少年院送致率は3.69%、中間少年のそれは8.11%に比し、上表1で示したように年長少年は12.18%である(2014年司法統計年報)。
 ならばそれを刑罰でばっさり切るよりも、丁寧にそれに向きあう、このようなスタンスのほうが日本の安全のためにも必要であるし、重要である。
 現在少年院新収容者のうち18,19歳は全体の3割から4割である(2014年少年矯正統計年報によれば、42%)。他方、その少年院出院者の最終出院後の刑事施設入所率は下がってきている(2004年出院者9.2%→2009年出院者7.4%)。この数値は少年院の処遇効果が上がっていることを示すものであり、18,19歳も少年法の対象にすべき大きな根拠になる。  
 18,19歳少年にとっても国の安全にとっても、少年法の対象になって保護措置をうけることは最後のチャンスだと言える。

(2)対象から外れたら
 少年法の対象から18、19歳の少年たちが外れてしまったら、当然ながらこうした保護的措置はなくなる。個別の調査などなくまったく形式的に犯罪の内容で検察官が処理することになる。2014年の成人の起訴率43.0%(公判請求起訴率26.6%・略式起訴16.4%)、不起訴率は57.0%(以上は2014年検察統計年報:総数403,041人から家裁送致・他の検察庁に送致、中止を除いた人員を分母にしたもの)であるから、年長少年の多くも不起訴になるであろう。また略式罰金や執行猶予になる場合も多い。いずれも保護的手当はなく放置されるのである。
 それでは刑罰になる場合はどうか。保護処分との比較である。
 この比較には同じ時期に同じ罪をおかした共通性のある対象者を選択して比較する必要があるが、日本ではその研究はない。州ごとに法律が異なるためその比較がかなり可能であるアメリカでは、少年司法の刑罰化・厳罰化は再犯防止において逆効果であるという研究が蓄積されている。その詳細は、日弁連「少年法の『成人』年齢引下げに関する意見書」(PDF)(2015年2月)にまとまっている。
 前記した2009年版犯罪白書は、法務総合研究所の「再犯防止に関する総合的研究」(2009年3月 1965年以降2006年9月30日までに有罪判決を受けた3561人を対象にしたもの)にある、「少年時(16~19歳)に有罪判決を受けた者(裁判時少年)は、再犯率、同種再犯率が極めて高く、再犯期間も短い」という事実に基づいての記述である。 加えて、少年法の対象からはずされれば、実名報道される。そうなると家族の特定も難しくはない。この実名報道が更生にもたらす影響は限りなく大きく、更生を困難にさせる大きな要素である。

5 結論
 18,19歳を少年法の対象から外すことは、少年個人の支援という意味においてもマイナスであるが、刑罰化・厳罰化は再犯防止には逆効果であるというアメリカの研究などを踏まえると、社会にとってもマイナスである。


(文責:子どもと法・21通信編集委員会)


- 子どもの育ちと法制度を考える21世紀市民の会 (子どもと法21) - 関連サイト 事務局通信
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